明るい茶髪を肩を跳ねる程度まで伸ばし、眼鏡をかけた人物・・・後のローテルロー橋の戦いを初陣に
今の段階ではまだ戦争にも出させてもらっていない、かろうじて兵法を学んだ程度の人間ではあるが譜眼の刻まれた赤い瞳は驚きに揺れていた。
それはピオニーにも解った。いつもすまして何を考えているのか解らないとすら称される幼馴染が目に見えて取り乱しているのだから。
そして、ピオニーはごく最近伯爵として迎え入れたガイラルディアがジェイドとは対照的に全くもって落ち着いた表情でいることも気にかかっていた。いくらなんでもフォミクリー技術については彼も
知っている筈。それを人間に使用し
ファブレ家にいた当時に関連するのではとピオニーは考え、とりあえずは取り乱しているジェイドを落ち着かせることにした。
「ジェイド、落ち着け。ファブレ公爵とそのご子息の前で俺に恥をかかせるな」
それは、ある程度砕けた口調ながらも皇帝であるピオニーがジェイドを『部下である』ジェイド・カーティスとして扱う言葉。即ちジェイドに対する命令だった。
ジェイドはまだ落ち着かない様子で眼鏡のブリッジに何度も触れていたがその意味はよく解っており皇帝としての命に背くわけにもいかない。
「失礼しました」
ジェイドはその場にいる全員への謝罪として頭を下げた。何とかジェイドを落ち着かせたもののまだ問題は残っている。
なんせ、ジェイドが取り乱したところから察すると本来あってはならない命である、ということがまず予測される。それに加え
その構造上の違いが自分達人間との間でどのような差異として表面化するのか。あるいは生活する上でどのように違ってくるのか。
つまりは、ピオニー自身受け入れるつもりはある。だが、差別の対象となるか否か、それが問題だった。留学生として二人を預かるとは言え町の人々に知らせるわけにもいかないため
恐らくはその状況を隠しての生活となるだろう。そして、
ピオニーの懸念はそこにあった。
「生体
ピオニーは先ほど取り乱したのもかつて没頭していた研究に関連するものと判断した。具体的な研究内容までは知らなかったもののそれならば、生体
「・・・我々と
ピオニーの言葉に、先ほど取り乱した自分を清算しようとしたのかジェイドはほぼ事務的に返答する。だが、ピオニーの求める回答はそこにはなかった。
「
その一言でジェイドを含め、ラウアヴェルとルーク、そしてガイラルディアもピオニーの求める答えが解った。
「・・・ある程度の情報を前もって刷り込んだ場合感情面での発達が遅れることと見た目と精神年齢に差が見られること、これらが主な相違と思われます」
ラウアヴェルの懸念していた言葉は出なかった。それにラウアヴェル、いやルークとアッシュは安堵した。それは即ち刷り込みがない状態のレプリカが赤子のような状態となることである。
今回は偶然に助けられた状態となったが、もし狭義的に刷り込みの行われていない
ラウアヴェルについてはファブレ家次男として認められる際に謁見の間にて会話が成立したことや謁見における作法を心得ていたこと等に矛盾していたのだ。当然クリムゾンも疑うだろう。
その理由は時を遡っていたからというしっかりとした理由があるが、二人はそれをクリムゾンらに話してはいなかった。
話せなかった、というのが正しいかもしれない。話してしまえば今まで築いてきた信頼関係が崩れそうな、そんな気がしていたのだから。
そのため、ジェイドが広義に説明してくれたことは二人にとってとてもありがたかった。
「なるほど。感情を表に出さない人間も居れば見た目と精神年齢が合致しない人間もいる。そう問題にはならないだろうな。他には?」
ジェイドの言葉は、ピオニーを
だがそれを彼は他にあるのかと問うことで敢えて、ジェイドに譲った。ジェイドも、伊達にピオニーと長年の付き合いをしていない。この後に何を求めるか、更なる相違の追求よりも求めるものがあることに気付いていた。
「ありません。その相違以外、
その言葉でピオニーの顔に笑みが浮かんだ。ジェイドの言葉で
一方ガイは、ピオニーの傍に控えつつジェイドの話を聞き自分を恥じた。
ラウアヴェルが生体
まだ年若いとは言え自分はもう伯爵地位を戴いている。ピオニーの傍仕えをしている以上ガルディオス家復興のためにも嫌でも政治に触れることになるのだ。失敗は許されない。ここに新しく自覚がひとつ芽生えた。
「同じ人間ならば問題はない。我々マルクトはラウアヴェル=フォン=ファブレ並びにルーク=フォン=ファブレを歓迎しよう」
ピオニーはジェイドとの会話の後やや目つきがしっかりしてきたガイに不思議に思いつつも話を続ける。
こうしてグランコクマ宮殿において、秘密裏に同盟が結成され二人の留学生がキムラスカから滞在するこことなったこの事実が史実として記されるのはまだ先の話である。
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第12章