カイルら6人はリアラの時空転移によってカイルの時代から18年前のダイクロフトへとやって来ていた。
目的はバルバトスを倒すため。転移に成功したのを確認するなりジューダスは忌々しげにそう呟いた。
確かに地上とは明らかに違う。踏んでいるものは土のようだが建物らしい建物といえば奇妙な形のドームのようなものしか見当たらない。
その建物の一番奥に一際目立つ大きな建物が見えた。それは傘か何かのような形をしている。
「あれがダイクロフトだ。これだけ外郭が塞がってしまっているのならわざわざワープしなくても行けるだろう」
ジューダスはその傘のような建物を指差して言った。
その瞬間、とてつもない地震が押し寄せた。
よく見るとダイクロフトの下方部分、剣の切っ先のような部分が燃えるように輝いている。
「ベルクラントか!!みんな伏せろ!!」
ジューダスはみんなにそう叫び、自分も伏せた。
地殻破壊兵器ベルクラントは高密度のレンズエネルギーを地上に放ち、粉塵を空に巻き上げ、とうとう外郭を完成させてしまった。
もうここから地上を見ることなどできない。
「早く、ダイクロフトまで行こう!バルバトスが何をするかわからない」
そのカイルの言葉に皆頷く。そして誰からということもなくダイクロフトのほうへと歩き出した。
その中でジューダスはバルバトスのことの他にもうひとつ考えていたことがあった。
ダイクロフトでスタン達と鉢合わせしないか、ということ。
こんなところで正体がバレでもしたらたちまち歴史が変わってしまう。
それこそエルレインが望んでいたことだ。この世界はスタン達によって救われなければならない。
自分はリオン=マグナスではない。ジューダスだ。
ジューダスはダイクロフトに着くまで自分にそう言い聞かせながら歩いていた。
「あ、ダイクロフトの入り口が見えてきたよ!」
カイルは入り口を見つけると、みんなに知らせる。
よく見るとそこに誰かがいる。しかも音を聞いてみると剣を交えているようだ。あわててカイルらはダイクロフトへと駆け寄る。
そこにいたのはミクトランを倒すために上に上がってきていたスタンらとバルバトスであった。
スタンらを見た途端、ジューダスの気持ちがほんの少し揺らぐ。考えていることと行動とが一致しない。
正体がバレてしまうというのに、勝手に足がスタン達のほうへと歩いていこうとしているのだ。
もしそんなことをすればもちろん歴史は変わってしまうし、エルレインの考えに賛同してしまうことになる。
ジューダスはそれだけは避けたかった。
「やばいよ!バルバトスが!!」
このカイルの一声によってジューダスはやっと我に返った。
「とにかくスタンさん達を助けようぜ!」
ロニの言葉に皆頷き、バルバトスのほうへと走っていった。そんな中ジューダスは、走りながら思う。
―ここでスタン達を助けなければ世界は救われなかったことになる。決して私情で助けるわけではない―
バルバトスも潔く退散し、ほっと一息ついていたカイルにスタンが話しかける。
「君すごいね。俺と息ピッタリだったし。もしかしたらいいコンビになれるかもしれないね」
そんなスタンにカイルは正体を隠そうとしどろもどろになっている。傍から見ると、かなり怪しい。
そんなカイルの様子を見ながら、ロニはジューダスの傍に近寄る。
「おい、いいのか?スタンさん達に言えなかった事、たくさんあるんじゃないのか?」
けれどジューダスはバルバトスとの戦闘中に決心がついていた。
「ああ。僕はジューダスとして生きる道を選んだ。確かに今あいつらと話したいとは思うが、歴史を変えるわけにはいかない」
「強いな…お前は…」
ロニは、本当に単純に彼は強いと感じた。
もちろん腕っ節の強さではない。
裏切り者と世間で罵られ、ジューダスという名で過ごす彼。
そんな彼はたった一言、未来を変えたい。ただそう思うだけで望むままの世界が手に入るというのにそれを受け付けようともせずに拒否した。
そして今、かつての仲間や兄弟がいる。
それなのに歴史が変わってしまうから、とずっと見ているだけなのだ。
ロニは、改めてジューダスは強いと、そう感じたのだった。
そしてそこに未来の四英雄達がやってきた。
「ありがとう。おかげで助かったよ」
スタンは2人に声をかけた。
「よかったら名前…教えてくれるかな?」
「ロ…ロニ=デュナミスです」
ロニはまだこの時代では小さいからいいが、問題はジューダスだった。
ここで本名を名乗ってしまえば、それで歴史は変わってしまう。
けれどジューダスには先ほどまでの動揺はなかった。
「…ジューダスだ」
その声に四英雄達の表情が一瞬凍った。
「…まさか…あんた…」
「リオンさん…?」
フィリアとルーティがほぼ同時に彼にそう言った。けれどジューダスは驚愕の表情を浮かべる2人にこう答えた。
「さっき言っただろう?僕はジューダスだ」
「そ…そうよね。あいつがここにいるはずないものね」
「そう…ですわね。私、勘違いしてしまいましたわ」
ルーティとフィリアは彼にそう言うと、スタン達の元へと戻っていった。そしてダイクロフト内部へと突入しようとしている。
そんな彼らに耳を澄まさなければ聞こえないような声でジューダスは静かに呟いた。
―ありがとう―
カイル達はそんな彼の様子を静かに見守っていた。
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