「やっとついた〜・・・・」

カイルが町の入り口で座りこみつつそう言う。

「ここまで来るのにけっこうかかったものね」

リアラも賛同する。

ここはアイグレッテ。先の騒乱で多くの者が神に救いを求め建設された町。

ダリルシェイドで復興のための資金集めをした後、その先にあるハーメンツヴァレーを抜け、ようやくアイグレッテについたのだった。

「さてと。これからどうする?」

グランドバザールを通りぬけ、広場へと出た一行。

そこでロニは今後の行動を聞いてみた。

「そうだな〜 ハイデルベルグも行きたいしノイシュタットも行きたいしホープタウンだって行きたいし・・・」

やはり優柔不断なカイル。

「まずはイクシフォスラーの入手が先、だろうな。あれがあれば移動も楽になるだろう」

「いくしふぉ・・・? なんだそりゃ?」

記憶のないロニは聞き慣れない言葉に首を傾げる。

「天地戦争時代の飛行機械だ。まぁイクシフォスラーのある地上軍拠点跡地はファンダリア王が管理しているから
ハイデルベルグでの謁見が先だろうな」

「・・・そんなことよく知ってるな。一般人が知り得そうにないことだぜ?」

ロニは一部の人間しか知らないような大昔の飛行機械の場所を知るジューダスに疑いの眼差しを向ける。

「・・・たまたま読んだ本にそう書いてあっただけだ」

確かに、リオンであった頃に読んだ本にそう記されていたのだからあながち間違いではない。

「だがな、そんな国が管理してるものをおいそれと一般人に貸すわけねぇだろうが。そんなもんが何で出てくんだよ」

「だー!!二人共やめろって!! オレだってイクシフォスラーのことは知ってたんだ。
それにジューダスはそれが使えたら旅が楽だろうなって言いたかっただけだって!
そうだろジューダス!」

カイルが上手く誤魔化すなど奇跡に近いのだが今回はカイルの誤魔化しに説得力があった。

なのでジューダスはその誤魔化しに乗って頷いた。

「そ、そうか。・・・悪かったな、変に勘ぐっちまって」

その場は一応年長者であるロニが大人なところを見せておさまったのだが

これは疑いの眼差しが続きそうである。

だが、それと同時にロニは妙な違和感を感じていた。

いつだったかコイツとこんな言い争いをしなかっただろうか、と。














「まずは船でノイシュタットへ行ってから、スノーフリア行きに乗り換えだ」

丁度アイグレッテから出航するノイシュタット行きの船に乗った一行は男性の部屋として割り当てられた部屋に

リアラを呼び込み、ジューダスがテーブルに地図を広げて今後の説明をしていた。

全員同じ部屋にするわけにもいかないのでリアラのみ一人部屋なのだ。

「で、スノーフリアから歩いてハイデルベルグかぁ〜!ウッドロウさん元気にしてるかな?

カイルは自分の感覚でついそう言ってしまう。

バカ!とジューダスがカイルを思いきり殴るがもう遅い。

「元気って・・・カイル、お前ウッドロウ王と面識なんてあったっけか?」

旅の記憶のないロニからすれば当然の疑問である。

「あ、いやだからそれは・・・」

当然カイルに良い言い訳など突然思いつかない。

「多分僕がウッドロウ王に会ったことをカイルに話したからそんな言い方をしたんだろう」

今度はジューダスがカイルに助け船を出す。

「ふーん・・・なるほどな。でもなカイル、そんな言い方じゃ勘違いされるぞ」

どうやらこれで納得してくれたらしく、カイルらはほっと胸を撫で下ろす。

そして、カイルの要望であるハイデルベルグに目的地を設定、と話が纏まった時

カイルら3人には覚えのある揺れ。

「ま・・・まさか・・・」

リアラが冷や汗をかく。

「でもさ・・・このあたりって絶対・・・」

カイルも同様に冷や汗をかいている。二人は顔を見合わせ引き攣った表情を見せた。

「・・・デビルズ・リーフの主、だろうな。」

冷静に言うジューダスに、んな悠長に説明してる場合か!とのロニの叱責が飛び、一同は甲板へと急いだのだった。












「・・・予想通りのようだな」

甲板に出ると、舳先に蠢くモンスター。

不気味な赤紫色のそれは、見境なく甲板を叩きつけ、船が進むべき航路を阻んでいる。

おそらく、船底の方では本体が襲うための準備をしているのだろう。

「・・・おそらくあれは末端部分だろう。本体は別にいる」

リアラ、カイルにはわかりきっていることをジューダスは言う。

ロニに対する説明、というのもあるし怪しまれないため、というのもある。

「末端!?ってことは、例えば本体が船底に穴開けでもしたら・・・」

「簡単なことだ。底に穴が開けば船は沈む。わかりきったことを聞くな」

ジューダスはいつだったか同じように言ったことを思い出す。

彼が迷わず例えとして『船底』を持ち出してきたのは、思い出すその兆しではないか、と考えあの時と同じ台詞を言うジューダス。

「・・・マジか?」

「マジだ」

やはりあの時と同じ会話の再現になったのだが・・・どうもジューダスの使う俗語というのが聞き慣れない。

「でも、どうするの!? オレ達じゃ、海に潜ったままの本体を倒すなんて・・・」

それは闇に『船底に穴が開いた場合対処できないのでは』と言っている。

本来の歴史であるこの世界では、リアラの奇跡の力は存在しないのだ。

「・・・海上から倒すか、もしくは船底に穴を開けさせてから水系晶術で穴を塞ぐ他ないだろう」

水系晶術、それも追加晶術と上級晶術にしか氷を出すことのできるものはない。

そして、まさかインブレイスエンドで船ごと潰すことなどできないし、かといってスプラッシュを唱えても

船の別個所に被害が及ぶ。一番無難なアクアスパイク、その追加晶術フリーズハンターでやるしかないだろう。

海上からなら、船を揺らさない程度に、であれば倒してそのまま航行できるのだが。

「海上からって、どうやって?」

カイルは舳先のフォルネウステイルと格闘しつつジューダスに問いかける。

「そうだな。一番手っ取り早いのは釣りなんだが・・・」

何気に恐ろしいことを言うジューダス。

釣りをするということは、すなわちフォルネウスの餌になるものが必要だということ。

言葉から察するに、食材ではなさそうである。となると、残る可能性はひとつしかない。

「その・・・誰が餌になるの?」

リアラが恐る恐る問いかける。丁度、フォルネウステイルをストーンザッパーで退けたところである。

「以前ならあいつが一番体力があったんだが・・・」

そしてふっとロニの方を見るジューダス。今回も彼はアイテム係である。

そしてリアラとカイルは思う。ジューダスは記憶が戻っていたならロニを餌にする気だったのかと。

だが、幸か不幸か彼の記憶はまだ戻っていない。

カイルとリアラは初めて『記憶がなくてよかった』と思ったのだった。







「ああ!船底の方に!!」

船の乗組員の声が聞こえた。

フォルネウステイルを倒したカイル達は、その声を頼りに船底へと向かう。

案の定そこには本体であるフォルネウスが侵入を試みていた。

既に浸水も始まっている。猶予はない。

ロニは相変わらずアイテム係だったのだが、違和感は強くなる。

どうして自分はカイルの隣にいないのだろう、と。

どうして自分はここで守られているのだろう、と。

何故か唐突に、自分は斧を振るっていたような気がしてくる。

そして、今リアラが詠唱しているアクアスパイクを自分も使えたような気がしてくる。

だが、何故なのかがわからない。

彼の心に不安が募る中、リアラの詠唱が終わる。目を瞑っていた彼女の瞳がすっと開いた。

「行きます!アクアスパイク!フリーズハンター!!」

少々加減して繰り出したのか、本来のアクアスパイクよりも規模が小さい。

丁度入り口付近でうねうねと進入中のフォルネウスに当たる。そして、追加晶術であるフリーズハンター。

こちらの規模がとてつもなく大きい。

アクアスパイクを小さく、フリーズハンターを大きく。なんという制御力だろうか。

そして、あっという間にフォルネウスごと船底に開いた穴が氷で塞がる

ノイシュタットまでならこれで大丈夫だろう。

だが、氷漬けデビルズ・リーフの主を付属の船が航行というのはなんとも貴重な体験である。

そんな貴重体験をしつつ、この船アルジャーノン号は船の修復のためノイシュタットへと向かったのだった。


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