「「「「・・・・・・」」」」

現在、カイルら一行の中に、暗い雰囲気が漂っていた。

今居る場所は古都ダリルシェイド。

かつての王城が跡形もなく崩れ去り、多くの人々がアタモニ神へと救いを求め

今では復興の目処もたっていない場所。

そして、そうなってしまった間接的要因を握るジューダスにとってこの光景は酷だろう。

「・・・ここって18年前はとても栄えていたのよね・・・」

その惨状を眺めつつ、リアラがポツリと誰ともなしに言う。

「・・・ここはかつてセインガルドの王城があった場所だ。だが、先の騒乱で城は倒壊し
王家の人間はかつての七将軍、その他王に仕えていたほぼ全ての人間がその倒壊に飲まれたらしい」

はっきりとした声で説明するジューダスだが、その声は重く、そして僅かに震えていた。

「ったくよー。ヒューゴとリオン!あいつらさえいなけりゃこんな町になることもなかったんだ!」

その隣には怒りを顕わにしたロニ。おそらく、騒乱で失った家族のことを重ねているのだろう。

ジューダスにとって、その言葉は刃であるとは知らずに。

その刃は狙いを違わずロニには気付かれることもなく彼の心に突き刺さった。

カイルもリアラも一瞬怒りを覚えロニを見るのだが、記憶がないのにその矛先を彼に向けるのは筋違いだ、と

その怒りを抑える。そして、一人の老人がやってくるのについに全員気付かなかった。

「そこのお若いの。この町に来るのは初めてかね?」

目深くフードを被った老人が声をかけてきた。

4人は今の今まで気付かず、声をかけられたことに驚く。

「そう驚かんでよろしい。・・・!?・・・・・・・・・・・・・・・・そうじゃ、お前さん達この町の復興に協力してはもらえんか?」

老人が一瞬ジューダスを見てかなり驚いたような顔をし、しばらく黙った後唐突にもそんな話を持ち掛ける。

「いやな、この町の人間は復興を望んではいるんじゃ。じゃがやっぱり世の中金でな。神団に縋っていったやつらもいるが
かつて聳えた王城、賑やかな市場、たくさんの人々が乗った船の波を切る音。それを取り戻したい人間がいるのも事実じゃ」

「わかりました!オレ達手伝います!」

カイルがダリルシェイドの復興を夢見たのかその場の勢いなのか手伝い宣言をする。

言い出したカイルに3人は驚くが、カイルだからなと半ば諦めにも似た心境になった。

「・・・具体的に私達は何をすれば・・・?」

リアラがまさかその細腕で土木工事をする、というのは考えられない。

それを思ったのか手伝いの作業について尋ねる。

「うむ。金集めじゃ

「「「「・・・・・・」」」」

4人はなんだ、その復興をほぼ他人任せにするような役割はと考えられるようになるまでしばらくかかったという。











「食らえ、双連撃!まだだ!! 崩龍斬光剣!!見切れるか!喰らえ、翔破裂光閃!貴様に見切れる筋もない」

「蒼破刃!!逃がすか!!空破絶風撃!!空を絶つ、喰らえ!絶破・・・滅焼撃!!」

「恐怖と共に消えよ、鳴け、極限の嵐!フィアフルストーム!!
我が呼びかけに答えよ!舞い降りし疾風の神子よ、われらに仇なす、意思を切りさかん!」

セインガルド周辺にて、そんな声が聞こえてくる。

聞こえてくる声全てが秘奥義と具現結晶なのだから少しやられている側にも同情したい

そんな彼らの前にはモンスターの山。

ロニが持っている瓶はおそらくダークボトルなのだろう。

しかし、この中でロニは全く戦ってはいなかった。

孤児院を出てからはパン屋で働いていたのだから、彼らの知るように斧は振るえないだろう。

またもやカイルは、戦闘で思い出すのではと淡い期待を抱いていたのだがその期待はしぼんでいた。

そのせい、だろうか?

彼が何故か戦うカイルらを見て違和感を感じていたのに気付かなかったのは。









「とりあえず10万ガルドほど稼いできましたが、あとどれくらいの金がいるのですか」

ジューダスはガルドのぎっしり詰まった袋を老人に渡す。

そしてやはり違和感があるのは彼の使う敬語

「これくらいじゃ家一軒建てられんのう。まぁ瓦礫のけと家の修復程度ならできそうかの」

なんなんだ自分でやってもいないのにその偉そうな口ぶりはと考えるのは自然だろう。

「ま、時間があったら瓦礫のけでも金集めでも手伝ってくれ」

老人はそう言うと、渡された袋片手に立ち去ろうとするが、途中で振りかえりジューダスを見る。

そこの黒いの。確か・・・ジューダス、とか言ったかの?ちょっと付き合うてはくれんか?」

ジューダスはまるでそう言われるのがわかっていたかのように老人についていった。

ダリルシェイド入り口にカイルら3人のみが残された。










「・・・・・うむ。ここなら誰も来はせんじゃろ」

「・・・・・お気遣い、感謝します。ルウェイン将軍

そう言われ、老人はフードをとった。そこには18年という歳月をものともしてはいないかつての面影。

最年長の七将軍と呼ばれたニコラス・ルウェインその人だった。

「やはりおんし、リオン・マグナスか」

「・・・はい」

ルウェイン将軍の目つきが鋭くなる。

「・・・世間ではおんしは裏切り者のソーディアンマスターとなっておる。じゃが・・・」

将軍は何か言いにくそうに言葉を濁す。

「そう罵られたとしてもかまいません。僕・・・私はそれだけのことをした」

彼女を守るために、僕は自分の意思で彼らを裏切ったのだから。

「ふむ。・・・あのメイド、マリアンと言ったかの?そやつか?」

ジューダスはドキリとしたが、なんとかポーカーフェイスを崩さずにいることに成功した。

けれど、その心の僅かな動揺を七将軍最長老が見逃すはずもない。

彼は悟った。リオンは18年前、ヒューゴにそのメイドを人質に取られたということを。

当時今の英雄達と共に戦った時にも、あのメイドの話やリオンの話が何度かあった。

それらを総合し、加えて今のリオンの動揺。

かつての七将軍というその肩書きは伊達ではない。

将軍は、そうか、とだけ言うとジューダスを、リオンを見据える。

「・・・ならばおんしが歴史を作ってみろ。どうやって当時のままの外見でいられたのかは知らぬが
おんしの歴史はまだ終わっちゃおらんじゃろう?」

リオンが当時のままの外見である、ということはすなわち自分の知らない何かが起こっているということ。

仲間がきちんと話をしているところからして怪談の類ではない。

そして、まだリオンに時間が残されているのなら。

もしリオンがまだこの町を好いているのなら。

彼が、裏切り者と罵られている彼が復興させることでダリルシェイドは復活するだろう。

誰よりもセインガルドを愛し、ダリルシェイドを守ってきた彼が復興させることで。



ジューダスは、ダリルシェイドの現状は自分に対する戒めだと考えていた。

それを復興させるなど、もってのほかだ、と。

けれどルウェイン将軍は言った。自分の歴史はまだ終わってはいないと。

エルレインによって受けた生は償いのために、彼らの息子を守るために使い1度死んだ者には過ぎた幸せを手に出来た。

もちろんそれで彼らへの償いが済んだ、とは言えない。

だが、この町の人々への償いは全くと言っていいほどしていない。

この町の惨状は自分への戒めだと考えてきたが、それでいいのだろうか、と思う。

ベルクラントの攻撃でこの町がこんな惨状になってしまったのは事実なのだから。

城の中に残された王家の人々や、巻き込まれたとされる、ルウェイン将軍を除く七将軍の弔いすらまだされていないのだ。



「・・・あり難きお言葉、肝に命じておきます」

ジューダスは、ペコリとルウェイン将軍に頭をさげ、その場を去っていく。

将軍は、満足そうな顔で、そして無言でその後姿を見送った。

ダリルシェイドの隅を抜け、入り口付近へ出ると、カイル達が自分を待ってくれていた。

彼はそれを見つけるとほんの少しだけ早足で彼らの元へと歩いていく。

何処でこの町の復興資金を作ろうか、と思いながら。


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