まったく・・・。何故僕がこんなガキくさいことを・・・。



こんな呟きをジューダスが残したのには訳があった。

日もとっぷり暮れた頃、カイル達はようやく遺跡の入り口まで戻ってきていた。

カイル達の視線の先にはロニがテントを張り、野営の準備をしている。

だが、彼がカイル達に気付いた様子はない。

3人とも入り口付近にあった茂みに隠れているためだ。

「じゃ、俺行って来るから合図するまで出てこないでね?」

そう言って茂みから出ていこうとするカイルをリアラが引きとめる。

「でも、大丈夫かしら?こんなので驚いてくれるの?」

「ロニも忘れているんだろう?僕らに会って思い出すという保証もない」

「きっと大丈夫だって!俺も思い出せたんだし」

じゃ、行ってくるね、と茂みから駆け出していったカイルにジューダスは思わず溜息をつく。

「私達を見せてロニを驚かすだなんて・・・。ちょっと無理があるような気がするけど・・・」

そう、カイルが二人に茂みに隠れているよう言ったのはこのためだった。

驚かすその方法は至って簡単なものなのだが、ジューダスの言っている通り多少の無理があった。

ジューダス、リアラの二人を見てロニが思い出す、という確証がないからだ。

だが、カイルは気にも留めずそのまま計画を実行に移した。

ジューダスは溜息をつきつつも、様子をみることにした。




「ごめん、遅くなっちゃった」

カイルがロニの前に姿を現した。

「お前、今の今までずっと何してたんだ!心配したんだぞ」

ロニはカイルが無事帰って来てほっとする半面、怒られているというのに嬉しそうなカイルに疑問を持った。

「で?」

「え、『で?』って?」

ロニはその正体を突き止めるべくカイルに聞いてみたのだが綺麗な鸚鵡返しで返ってきた。

「恍けてんじゃねーよ。お前、何かあったんだろ?」

ロニはその態度を恍けていると勘違いしたらしく、カイルの返答には疑問を持たずに尋ねた。

本当は何を言っているのかわからずただ鸚鵡返しに尋ねただけだということは茂みの向こうの二人のみが知る。

「ああ、それか! ラグナ遺跡のてっぺんで二人に会ったんだ」

「二人?誰と誰に?」

ロニは説明不十分なカイルの言葉に更に疑問を返す。

「まぁ、会ってみてよ!二人共ー、出てきていいよー!!」

その様子をずっと見ていたジューダスとリアラはカイルの声に、茂みを出た。

ジューダスは溜息をつきつつ、リアラは苦笑いしつつ。

その二人がロニの視界に入った。焚き火の炎に二人が鮮明に照らし出された。

漆黒のような髪と服。そしてアメジストの瞳を持った男。

ライトパープルのガラスのような飾りをつけたマロンブラウンの髪と瞳、そして花のような桃色のワンピースを着た少女。

「・・・・・・」

ロニは何故か言葉が出なかった。

カイルはロニのその反応を楽しむかのようにニッコリと笑っている。

そして二人がロニの目の前まで歩いてきた。

「カイル・・・・」

「ん?何?」

ロニの呼びかけにカイルはニコニコしながら答える。

きっと続くであろう言葉を待ち望むかのように。

「この二人か?てっぺんで会ったっていうのは」

その期待が打ち砕かれるとも知らずに。

ロニのその言葉にカイルは目を見開いた。

ジューダスはやはりか、という目をし、リアラは心なしか悲しそうな表情をしている。

「ロニ、何言ってるんだよ!? ほら、ジューダスとリアラだよ!覚えてるだろ!?」

カイルは身長的にかなり差のあるロニの胸倉を掴んで揺さぶる。

身長的にカイルが強制的に屈ませる状態で揺さぶっているため、今後の腰痛が心配である

「カイル、もういい。そいつは知らないと言っているんだからそうなんだろう」

ジューダスの言葉にカイルは掴んでいたロニの服を放した。

「あんたら、カイルの知り合いか?」

「ええ。私達以前クレスタで会ったことがあるの。でも、まさかこんなところで会えるとは思わなかったわ」

リアラがジューダスとカイルに目配せする。

どうやら『話を合わせろ』ということらしい。

「多分貴方がいつも一緒だと言っていたから僕達に会っていると勘違いしたんだろう」

こんな場面でなければジューダスがロニ相手に『貴方』と使った時点で笑いのネタになっただろうが今は状況が状況である。

「そうか・・・。おどかすなよなー」

ロニはカイルの頭をぼふっと軽く叩いた。

「ねぇジューダス、リアラ。この後予定とかある?」

カイルはしばらく寂しそうな表情をしていたのだが、すぐさま表情を引き締め二人に尋ねた。

「いや、僕は特にはないが」

「私もよ」

「じゃあ一緒に旅しない?俺達今旅してる途中なんだ!いいよね、ロニ?」

「まぁ・・・旅は道連れって言うし・・・。でもな、他人を無理に巻き込んじゃいけねぇんだぞ?」

「そんなことわかってるよ! で、どうかな・・・?」

カイルは不安げに二人を見る。

二人に予定がないから、と言って二人が一緒に旅をしてくれる保証などないのだ。

例え以前の仲間、と言っても今は状況が違う。

「特にすることもないし、いいわよ。私もカイルと一緒にいたいし」

リアラは少しばかり照れながらも了承した。

ロニはその様子にニタリと妖しい笑みを浮かべつつカイルを肘で小突く。

「そうだな・・・。特にすることもないし、お前の無鉄砲の面倒でも見て暇を潰すことにしよう」

ジューダスも、カイルには刺さりそうもない棘を含めつつ了承した。

カイルは、酷いと言いつつも笑っていたのだがロニはというと、何故か面白くなさそうな顔をしていた。

「・・・過保護は相変わらずか」

「え、何?何か言った?」

ジューダスのポツリと呟いた言葉が少しだけカイルに聞こえてしまったらしく、何でもない、とジューダスは返した。

「それで・・・行くところは決まってるの?」

ロニの妙な表情に気付いたリアラはさりげなく話題を変える。

「ここに来るってことしか決めてなかったからな・・・。カイルは何処か行きたいとこあるのか?」

ロニは頭の後ろを掻きつつ返答しカイルに尋ねる。

「んー・・・特に急ぐことだってないしテキトウに行こうよ」

「だが、一応目的地程度は決めておいた方がいいだろう。各国へ船の出ているアイグレッテはどうだ?」

カイルらしい発言に溜息をつきつつジューダスはそう提案する。

「そうだな・・・。確かにアテなんざないがアイグレッテなら何処にだって船でいけるしな」

「じゃあ、ひとまず目的地はアイグレッテね」

ジューダスの提案にロニが乗ったことで目的地が決まる。

「じゃあ・・・一応自己紹介しておいた方がいいわよね。私はリアラ。これからよろしくお願いします」

リアラが微笑みつつ自己紹介する。

「僕はジューダスだ。宜しく頼む」

ジューダスは簡潔に自己紹介した。

「これからよろしく!ジューダス、リアラ」

そんな二人にカイルは元気良くそう言った。

「知ってるとは思うが俺はロニ・デュナミスだ。こちらこそよろしく」

こうして、ジューダスとリアラも旅に加わり、カイルの望んでいた結果とは少々違ったものの

また四人で旅が出来る、とカイルはわくわくしていた。

次はどんな冒険が待っているのだろうか。どんな人達と出会うのだろうか、と。

そしてカイルはロニをちらりと見る。

きっと一緒にいれば、ロニも思い出すよね。

カイルはそんな期待を今後の旅に抱いていた。

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