「カイル!」
リアラは嬉しさのあまり階段を蹴ってカイルの胸に飛び込んだ。
カイルも両手を広げ、リアラを抱きしめ、かつて共に旅をした少女 リアラとの再会を喜んだ。
そう、カイルはリアラに再会したことで旅をしたときのことや仲間のことを思い出すことが出来たのだ。
「カイル、カイル、カイル!」
リアラは嬉しそうに何度も彼の名を呼ぶ。
カイルはそんな彼女を強く抱き締めた。
神を討つために滅びを選んだ聖女。そんな彼女の望みと世界の存続を選んだ彼女だけの英雄。
記憶も消え、もう会うことなどないはずだった二人の逢瀬。
その喜びはとてもじゃないが測ることなどできないだろう。
そして、その感情に任せしばらくは喜び合っていたものの、二人は次第にもういなくなってしまった仲間のことに気づく。
燃えるような赤い髪を二つに結わえた弓の名手、桃色の髪をした天才科学者、そして竜族の骨の仮面を被った黒衣の双剣士。
ナナリーはホープタウンで9歳になっているだろう。
けれど千年前の時代から来ていたハロルドや、エルレインに復活させられたジューダスはどう足掻いても会いようがなかった。
二人は再会を喜んだが、会いようのない二人のことを考えると何故か後ろめたい気分になった。
自分達だけ喜んでいていいのか、と。しかしそれはどうしようもないことも二人は十分に理解していた。
そして、喜びのあまり抱き締めあっていた二人はどちらからということもなくそっと離れた。
二人の間にふいた風が少し肌寒く感じた。
そしてカイルはわずかな希望を捨てきれずリアラに尋ねた。決して考えてはいけない希望を。
「ねえ、リアラの力で・・・「ダメよ!絶対にダメ!私達で歴史を変えてしまうつもりなの!?私達は何のために戦ったの!?」
リアラの剣幕はすさまじいものだった。
もちろんカイルが、何も考えずにそんなことを言ったわけではない。ただ、この場に居てもいい人達がいないことに理不尽を感じた。
ただそれだけだということにリアラも気付いている。気付いてはいるのだけれど、それでもカイルのその言葉は許せなかった。
何を何のために守ったのか。
リアラにとって、それがわからなくなってしまうような台詞だったから。
「わかってる・・・。わかってるんだ。・・・・ごめん、リアラ」
頭では理解している。
せっかく神から守った人々の歴史を変えてはいけない、と。
だが、そこにいるべき人がいない。
カイルはやるせなさを感じつつリアラに謝った。
「私こそごめんなさい・・・。でも、私にもう神の力はないわ」
リアラはそう答えると、そのままうつむいてしまった。
「ジューダス・・・。ハロルド・・・・」
返事がないとわかってはいたが、カイルは二人の名前をそっと呼んでみた。
もちろん2人からの返事など返ってこないはずだった。けれど・・・。
「なんだ?」
急に背後から聞きなれた声がした。二人は驚いて後ろを振り向く。
するとそこには黒衣の少年が立っていた。