声部をつくる

いくつかのパートによる曲をつくるにしても、創作したメロディーに音を重ねて伴奏をつくるにしても、これまで見てきたように「和音」の働きについて知ることが大切であることはよく理解できたことと思います。作曲や編曲をする際には、和音の進行に従って音を重ねて必要なパート(声部)をつくる作業が欠かせません。ここでは、そのパートをつくる際におさえておきたい基本的なことがらについて見ていきましょう。

◆声部の進行のいろいろ◆
二つのパートで構成する流れ(進行)は次のように分けることができます。
進行によって、音楽のイメージが変わりますので、どのように進行させるかは、作曲者や編曲者がその曲をどのようにデザインするかに大きくかかわります。
それぞれの声部をどう動かせば、自分の思い通りの響きやつくりの音楽になるか、いろいろと試し工夫する手がかりとしましょう。
●並進行 それぞれのパート(声部)が同じ方向へ進むことを言います。
●反進行 それぞれのパート(声部)が反対の方向へ進むことを言います。
●斜進行 一方のパート(声部)は動かず、もう一方のパート(声部)が動いて進むことを言います。

◆四声体での音の重複や省略について◆
和声の学習では、合唱や器楽アンサンブルを構成する四つの声部(ソプラノ、アルト、テノール、バスの音域を担当するパート)を基本的なものとしてとらえ、
その理論を応用して大規模編成のオーケストレーションまで広げていくことをめざします。
その基本となる四声体で和音を奏する場合に、同じ音を重ねて使うことを重複と言います。

 ●同じ音を重ねて
   良い響きが得られる重複の仕方
根音重複(和音の根音を二つのパートで使う)
は、良いこととされています。
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 ●同じ音を重ねても良い
   とされている重複の仕方
和音の第五音を重複するのは、可(まあまあ良い)
とされています。
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 ●避けた方が良い
   とされている重複の仕方
和音の第三音を重複するのは、良い響きが得られない
ので、避けた方が良いとされています。
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 ●省略について 三和音のうち、どの音かを省略する場合は、第五音を省略することが望ましいとされています。
それは、根音と第三音だけでもその和音の響きを表現できるし、その和音の機能をある程度
表現できるからです。第五音を省略した場合は、根音あるいは第三音を重複することになりますが、
属和音(Xの和音)の場合は、第三音が導音であるために、重複させない方が良いとされています。

◆禁止される声部の進行◆
和音を四つの声部に割り振り、進行させる際に気をつけたいことがいくつかあります。それは、これまでに先人が試行錯誤した経験の中から、
音楽的に好ましくないと判断し、『しない方が良い』『すべきではない』としてきたことがらです。それは、次のようなことがらです。

 ●属和音の第三音重複 いずれの調でも、属和音(Xの和音)の第三音を重複する
ことは、響きに良くない影響が出ることから避けるべきこと、
すべきではないこととされています。
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 ●並行8度は避ける 右の例では、ソプラノとバスが8度の並進行をしています
右の例では、テノールとバスが8度の並進行をしています
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 ●並行5度は避ける 右の例では、ソプラノとテノール・バスが5度の並進行をしています
右の例では、テノールとバスが5度の並進行をしています
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※並行8度は「禁止」あるいは「避ける」と書きましたが、実際の音楽では並行8度に見えるものがよく見受けられます。特に混同されがちなのは、重複8度です。
たとえばピアノ曲などでは、オクターブで旋律を奏することがよくありますが、それは並行8度ではなく重複8度と呼ばれるものでオクターブで重なっている一つの音と
見なされるべきものなのです。ですからこれも並行8度と混同し、避けなければならないと考える必要はありません。
吹奏楽やオーケストラなどでは、一つの旋律をクラリネットとコルネット、ホルンの3パートで奏するなどということがよく行われます。これも一つの声部を3つの楽器音
を融合させて出すという意図で奏されるものですから、並行8度とは意味が異なるのです

 また、どうして古典的な和声学ではこの並行8度や並行5度を禁じているかと言えば、完全5度や完全8度という音程が非常に協和度が高いことによります

つまり、音が協和しすぎて響きの厚みが欠けてしまうのです。和声学では三和音の中のある音を重複してソプラノ、アルト、テノール、バスの四声にして使いますが、その四声が連続5度や連続8度の進行をしたとき、音が協和しすぎて3声のような響きになってしまう、またはその響きが空虚になってしまうことをおそれたことによるのでしょう。


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