TOM2008の会場で拝見したのですが、寸法の取り方やパーツアッセンブルなど理想的でゴールデンエイジのフランス部品で纏めた素晴らしいランドナーです。特筆すべきはパーツ1点1点すべてに手が入っていてピカピカに磨きかれているのは勿論、チューンナップされている、という点です。カラーは黒に見えますが紺色です。

■オーダーしたきっかけ■
このフレームをオーダーしましたのは1985年初めのころでした。会社に入って3年が経ち何とか仕事にも慣れてきたころです。会社に入った当時は休みもほとんど無く、休日出勤ばかりで落ち着いてサイクリングができる状況ではありませんでした。3年が経ち、社会人として何とか時間的にも金銭的にも若干余裕ができて、待望のオーダーが出来る状態になってきました。そう考え出したら、さまざまな構想が出てきました。あんなのにしようか、アレを使ってこんな風にしてみようか、と。それでもやっぱり最後には、今まで楽しかったランドナーで走った自然の中の光景が浮かんできました。自分にはランドナーだと思いました。こうして1985年が明けたころにオーダーを入れ、年も押し詰まったその年の12月に上がってきました。このフレームは2台目の東叡ですが、1台目の東叡はいわゆるショップがオーダーした吊るしのクロモリスタンダードフレームでした。そんなスタンダードが長かったため、どうしても2台目の東叡は本当の意味でのオーダーの東叡が欲しかったんです。フレームカラーはパッと見ますと、黒に見えますが、よく見ますと実は紺色なんです。

■2007年リニューアル開始■
昨年の2007TOMで初参加しましたパパポン氏ビーズオレンジ号が私にカルチャーショックを与えました。このビーズオレンジ号はフレームの段階から途中経過も含めて傍でずっと見続けていました。 完成したときには本当に感激しました。こんなキレイにまとまった自転車がこの世の中にあるのか。何から何まで個人のためだけに手をかけた、これこそが本当のオーダーだ!と思いました。その後に 『自分もこんなスペシャルメイドな自転車が欲しい!』 という欲求が湧き上がりました。所有しているランドナーをリニューアルして、今本当に自分の欲しい自転車にしようと考え、パパポン氏にリニューアルをお願いいたしました。それから70年代の部品を全てはずして、パパポン工房にフレームだけを持ち込みました。基本は自分の中にある60年代前半のランドヌーズが理想でした。 組み付けるパーツは順次工作の順番に持ち込みました。『自分のビーズオレンジよりもはるかに手間がかかっており、磨いているうちに何度自分のと取り替えちゃおうかと思ったことか』とこれも何度も言われました。特にAllvitの三つ爪Rメカと、プラットホームペダルはかなりきつかった、と聞いております。世界に二台とない自転車を組んでくれたパパポン氏には感謝しきれません。

■フレームのこと■
このフレームの材質はSL管ですが、特に指定したわけではありませんでした。531としか指定していないのになぜかSL管で上がってきました。当時の私はSL管の存在を知りませんでした。当時東叡にはこれしかなかったのではと思います。 今では貴重なSL管でとてもラッキーでした。出来上がってきた当時は、今まで見慣れた531のステッカーと違うのがいやで、ステッカーを貼らずに仕上げてもらいました。最近シートチューブだけは貼りましたが、四角いフォーク用は貼らないでおいたところ、このフォークステッカーを無くしてしまいました。知らないというのは恐ろしいことで、今は泣いています。もう一つ後悔していますのが、シフトケーブルを内蔵にしなかったことです。当時はあえてそこにこだわっていました。若かったですね。

SPECIAL THANKS and Text : しもしもさん

クランクはStronglight49D。
49Dは痩身加工していただきました。細くすることでサンプレチェーンリングとマッチした、いい雰囲気になったと思います。


チェーンリングはSimplexパターンのCT's 48×34。
CT’sさんでサンプレリングを作っていただきました。この歯数ですと本物は窓の隙間が細窓、太窓になってしまいますが、両方細窓にしてデザインの統一感を考えました。大変すっきりした感じになったと思います。

オーダー当時の姿はプロダイコッタード+サンプレ46X32でしたが、 今回の組み合わせにしてずいぶんイメージが変わりました。85年当時、あまりにサンプレのリングが柔らかいのでパターンレスから抜くつもりでしたが、途中で断念した記憶があります。


ポンプはAD-HOC TOURISMです。
これも新品の秘蔵品です。今回のTOMでおろしました。なぜか最初からホース式ではなくアダプター式でした。オーダー時、ポンプペグはAD-HOCの細いタイプ専用にするため短くギリギリのサイズに指定してあり、太いタイプはセットできません。

リヤメカ。
リヤメカはHuret Allvit '65年頃の物。

Huret Allvit 3点セットですが、60年代仕様にするため、すべて1点ずつ購入し直しました。オーダー当時はよく見慣れた70年代のAllvitでした。

新たに入手した順にパパポン氏に渡し、すべてばらしてもらい、再研磨、再メッキを施してもらいました。Rメカの甲羅の中のパンタグラフのアームも含めて、すべて再研磨、再メッキをしてあります。誰にも見えませんが。ここはあえて再メッキにこだわりました。Luxeよりキレイな最高のAllvitにしたかったのです。

美しいヘッド付近。

ヘッド小物はStronglightP3。ヘッドナットだけ長野の四本氏に作っていただいたジュラルミン製に替えています。

ステムはPHILLIPEです。この年代のタイプには定番かもしれませんが、ハンドルバーとステムは 『PHILLIPE』 でこだわりました。後ろの穴はふさいであります。

ハンドルバーはPHILLIPE PROFESSIONNEL 旧タイプです。これも入手までにずいぶん時間がかかりましたが、運よく春日部のM氏から譲っていただきました。このPHILLIPE  PROFESSIONNELは新旧含めてかなりの数を見ましたが、満足のいく曲がりのものにはなかなか出会えませんでした。旧タイプの文字タイプでもかなり開いた曲がりのものをたくさん見ました。今回の個体は理想のRの物に出会えたと思います。

サドル。

サドルははIDEALE♯90内曲がりです。このランドナーにはこのモデルしかないと決めていました。こだわりの一点です。

ピラーはワンオフでジュラルミン♯7075から作っていただきました。特に秀逸なのがイデアルのやぐらの形に合わせて、パイプを面一なるように削ってあることです。
ただ水平に削っただけではなく隙間の部分がまったくないようにRを合わせています。またパイプのトップもやぐらのふちと合わせて、ドーム型に仕上げてあります。
覗き込んでから触らないと絶対にわかりませんが。
またやぐらのボルト、ナット類はすべてジュラルミンから削り出しで、オリジナルを再現しています。

へッドライト。

ヘッドライトはJOS431Cです。
当時仕様からそのまま残っている数少ないパーツです。

FキャリアはTOEI オリジナル7mmのもの。
マッドガードはHONJO MAVIC型。 

ぺダル。

ペダルはLyotard♯23。いわゆるプラットホームです。
新品ですが、すべてカシメをばらしてもらい、シャフトも含めてすべて再研磨、再メッキを施してもらいました。
玉当たり面もきれいに再研磨してもらい、なめらかなまるでカンパのようなスムーズな回転になりました。

ハブ。

ハブはMAX-CAR。赤フタが6穴タイプです。
新品ですが、組む前に再研磨を施しました。

ウィングナットはHuret LUXEによく似た小ぶりのVitです。Huretはあえてはずし、あまり見かけないVitにしました。ハブシャフトを短くカットして、Wナットの穴をふさいであります。

ハンドルバー付近。

ハンドルバーはPHILIPPE PROFESSIONNEL。
ステムはやはりPHILIPPE70mm。

ブレーキレバーはM.A.F.A.C.  いわゆるドットのあるタイプです。Rの部分が絞って細くなっており、MAFACの歴代レバーの中では一番カッコいいと思います。


バーテープはFUJITOSHI の本革の黒。

ブレーキアーチ。

ブレーキアーチはMAFAC DURAL FORGEです。
唯一の欠点は、刻印が薄く磨いていくと文字が消えてしまうので、あまり磨き込めないことです。

ボルト、ナット類はすべてジュラルミンから削り出しでオリジナルを再現しています。
アーチワイヤーのツヅミナットもジュラルミンから作ってあります。

テールランプは東叡社で作っていただいたLUXOR Battery Taillightの レンズを使用したテールランプです。シートチューブにセットしましたランプも当時のままです。

Rメカ付近。

チェーンはSEDIS Delta Course。これがAllvitには一番マッチしたチェーンです。一番スムーズに変速します。

フリーはミルレモ 15X17X19X21X24 の5速です。

ダイナモ。

JOSタイプTです。 元々タイプBをセットしていましたが、どうしてもここは 『B』 の原型である 『T』 にしたかったのです。JOSのロゴも旧いタイプにこだわりました。ボディ形状は似ていましたが、起倒レバーがBは直線形状なのに対し、Tはなぜかシートステー側に90度曲がっています。そのため、そのままセットしてしまうと、起倒レバーがシートステーに当たってしまいセットできませんでした。

そこでエンドを中心に下方向に約2pほどオフセットしなければなりませんでした。ここで今までのブラケットをサンドイッチにするような形状で新たなブラケットをワンオフで作っていただきました。すっきりしたブラケットを作ることが難しく、どうしてもつなぎ合わせた形になってしまいます。3回目で納得できる現在のスマートな形が完成いたしました。

ガードテールランプ。

ガードにセットしたテールランプは、P3ヘッドナットも作っていただいた長野の四本氏のオリジナルのテールランプです。ジュラルミン製で1個1個手作りで仕上げているウロ風のものです。レンズが面白いもので裏側凹イクラ形状になっています。


マッドガード。

マッドガードはHONJO MAVIC型です。当時もこれを使っていました。今回当時モノの新品ストック品を使いましたが、今でも新品が手に入るというのはうれしいことです。同じMAVIC型のガードから補強板を切り出しています。

タイヤ。

タイヤは今は絶版のWOLBER スーパーランドナー32Bです。
今回は85年当時から大事にとっておいたスペアをおろしました。
新品の秘蔵品です。

リム。

リムはスーパーチャンピオン650B。当時はMAVICのパイプリムにスーパーランドナーをセットしていましたが、リム径が若干小さいためタイヤをセットする際に簡単にビートが外れてしまいました。スーチャンはこのようなことが無くスーパーランドナーにはぴったりです。やっぱりスタイル的にも機能的にも定番ですね。

フレーム design:yajima kazuo
tube: Reynolds531 SuperLight Weight
size:515 top:520
TOEI original B type lug
スポーク ROBELGEL Trois Etoiles 288o
ハブ MAX-CAR
フリー MILREMO 15×17×19×21×24
ヘッド小物 StronglightP3 ウィングナット Vit
ハンガー小物 Stronglight サドル IDEALE♯90
Wレバ− Huret Allvit ピラー Self made Duralumin ♯7075
Fメカ Huret Allvit ハンドルバー PHILIPPE Professionnel
Rメカ Huret Allvit ステム PHILIPPE 70mm
クランク Stronglight49D 165mm バーテープ Fujitoshi Leather Black
チェーンホイール CT's 48×34 Type Simplex ブレーキレバー M.A.F.A.C.
チェ−ン Sedis Delta course ブレーキアーチ MAFAC Dural Forge
ペダル Lyotard ♯23 ダイナモ JOS Type T
クリップ Christophe ヘッドランプ JOS 431C
ストラップ Christophe テールランプ TOEI Original &Type Ulo Original made
ガード HONJO Type MAVIC ボトル TOEI
タイヤ Wolber Super Randonneur 650×32B ボトルケージ IRIBE Stainless
リム Super Champion 650B ポンプ AD-HOC Type Tourism

1985 TOEI 650B RANDONNEUR 仕様表       

編集後記

いや〜〜〜、今回はオーナーのしもしもさんにこの車のいきさつや特にHuret AllvitやLyotard♯23のSpecial Tune UPの話、部品の解説までこと細かく書いて頂きました。普通はオーダーに当たってのきっかけや苦労話がメインなんですが・・・・Special Tune UP部品の話はぱぱぽんさんのブログで皆さんご存知の通りです。この車だったんですね。(笑)どうでしょう、TOM2008の参加車では多分1番手の掛かっている車ではないでしょうか?いやはや、本当に驚きました。

でもう1つ、驚いた話があって、しもしもさんは拙HPのこの「クラシック名車アルバム」にこの車を是非載せて欲しいと思っていたそうで、当日まったく偶然に私からお願いしてこれが実現することになってしまいました。(驚)この話もお願いしていたいきさつの中に書いてあっていや、イエスの「求めよ、さらば与えられん」を地で行った話だなあ・・・と思って未だに信じられない思いです。とにかく魔可不思議な話ではあります。オーナーのしもしもさんには全面的にご協力頂いてなおかつ素晴らしい原稿なども頂いて有難うございました。最後まで見て頂いて有難うございました。

No41

2008.11.19

1985 TOEI 650B RANDONNEUR

Special Tune up : Mr. papapon