2006  TOEI 650B Special Camping Model

Rene'HERSE 60年頃発行カタログより 「Camping」

一体、これほど衰退していた車種も珍しいのでは?と考えています。昔、まだ少年だった頃、サイドバッグをつけて走って行くサイクリストの姿を見ては憧れたものでした。よし、いつかは俺も・・・・・と思って随分時が経ちました。気がつくと・・・・就職、結婚、子育て、マイホーム購入、子供の進学、などなど雑事に追いまくられてやっと一段落、よし!!少年の頃からの夢を一つ実現するか・・・・と思って自転車店へ行ってみたら・・・・・

なんとCampingなる車種はとうの昔に無くなり、今や野山を走る為の車種であるはずのMTBにキャリア、バッグをつけ、北海道他各地でこの珍車種?が「Camping Model」として走っている事に本当にビックリしました。それはちょっと違うんでないかい?売れない車種はバッサリ切り捨て、とにかく売らないといけないから、とメーカー、小売店も「客からキャンピング車の要望はあるから」と今あるMTBにとにかくキャンピングキャリアをつけて「これが今のキャンピングモデルです。」と販売・・・・・という営業姿勢は到底納得できるものではありません。昔から大事に育んで来た車種体系など自転車文化はどこへやら、かわいそうなのは何も知らない若い人たちです。この珍車種?を買わされて走りにくい、用途が全然違う車で走らされているのです。この現実・・・・・各大手メーカー、小売店様はどのようにお考えなんでしょうか?一つ聞いてみたいところです。一体何なんだ!!これはどういう事なんだ・・・・???そう、世の中は凄いスピードで動いていて、ランドナー系の昔からある、伝統的4サイドキャンピング車なる車種は今や絶滅寸前までに追い込まれています。作っているメーカーもすでに無く、今ではオーダーしか手に入れる方法は有りません。

今回、ご紹介するこの車、nogさんの「2006 TOEI 650B Special Camping Model」ですが、今や貴重な伝統的4サイドキャンピングですが、そればかりではなく、各部の工作はもとより、パーツのグレード、アッセンブルに至るまで全盛期でも見られなかった程の完成度の高い、非常に素晴らしい車に仕上がっております。
nogさんに作るに当たっての苦労話などお願いしてしまいましたが、これまたビッシリ書いてきて頂きました。抜粋して載せて下さい・・・とコメント有りましたが、とんでもない、非常に参考になる点も多いので実車写真UPの前に全部載せてみます。今後のオーダーの参考になると思います。今回のこのレポート読んで昔からの伝統的4サイドキャンピングの魅力を再認識して頂き、オーダーしてみよう・・・・という方が一人でも増えることを期待しております。


Text : nogさん

■コンセプト

○家族で国内を長期間、疲れずにキャンピングが出来ること。
→大型サイドバッグ4個を付け、家族の分の荷物も積載。(お父さんがんばって仕様)
また、サイドバッグのキャリアは、大型のバッグで縁石などにこすらないように、できるだけ高い位置に付ける。
→フロントフォークの弾力性を維持。フロントキャリアの止め方。42Bタイヤ。

○TOEIらしい、端正ですっきりとしたフォルムであること。
→前後チューブと前後マッドガードとの間隔を同じにする。
→しまって見える、サイドキャリアの寸法、位置の工夫。
→できるだけ「面」のイメージが強い部品(アルビー、FCC、軽合ベースサドル、TAチェンホイール、エルス型ステム、ブレーキレバー、ヘッドランプ)を使い、イメージを統一。
→フレームサイズが小さくなりがちなので、ヘッドチューブの長さをできるだけ確保。

○使い勝手がよいこと
→4サイドの輪行可能。
→フロントサイドキャリアは枠だけで着脱可能。
→ダイナモ起倒レバー
→バッグの外に大型水筒を付ける。行動中はバッグを開けずに水分補給。

nogさんの1年がかりのイラスト。凄い情熱を感じました。

■作る上での苦労話など

今回はオーダー二度目でしたが、初めて自分で図面を引いてみました。谷口さんのキャンピングを星野さんに見せて「こんなイメージで、フレームサイズ545mmで作りたいんですが。」と話したところ、全体の寸法を出してくれたのでそれを元に二分の一の大きさで図面を引き、フレーム各部分は星野さんが出した寸法そのまま、パーツや工作、塗装などは、図面にかき加えながら考えました。かいたり消したり、図面と格闘すること約一年。でも最高に楽しい一年でした。

キャンピングといえばサイドバッグですが、どこのバッグを使うかで迷いました。そしてサイドバッグをいえば、犬印やTOEIののサイドバッグ無き今、アルプスかソローニュで二者択一を迫られました。アルプスの物は薄型。容量が小さいですが、縁石にぶつける心配はなさそう。自分のフレームサイズだとこの程度が丁度良いか?ソローニュはデザインも容量も申し分無いですが、自分のフレームサイズにはちょっと大きすぎるか?TOEIの山田さんや、知り合いにも「akutaさんのはフレームサイズが大きいからソローニュでも見栄えがするけどねえ。」などと言われ、一時はアルプスのバッグに心が傾きました。が、容量の少なさをカバーしようとする(お父さんがんばって仕様なので)と、パニア台を付けることになりリヤがすっきりしないこと、リヤサイドバッグが横長で、踵がバッグをこすることになりかねないこと、アルプスのバッグに合わせたサイドキャリアの形は枠が小さめで、見た目がぱっとしないこと、アルプスのバッグはやはりアルプスのキャンピング車に付けたいなあ、ということ・・・・・などからソローニュのバッグを付けることにしました。

バッグは決まりましたが、難しかったのは、サイドキャリアの位置と寸法。こういうことはTOEIに任せた方が、良いのが出来るそうですが、考えるのは何より楽しいのでチャレンジしました。図面に書き込んだり、園芸用の針金で試作品を作り、ケルビムのランドナーに付けてみたりして、リヤサイドバッグの踵の当たらない位置、サイドバッグの下部を縁石にこすらない位置、見た目がしまって見える枠の大きさを探しました。その結果、リヤサイドキャリアのダボ位置が、ダイナモのダボの位置とほぼ同じ高さになりました。

フロントサイドキャリアの止め方は、まずステイをできるだけ前方に付き出させたいな、というデザイン上の希望があったのですが、自分のフレームサイズの場合、フロントキャリア前端と、フォークエンドを結ぶステイだと、ほとんど直立してしまうため、スピード感が得られず、ラウンドステーを採用することにしました。またその方が、フロントフォークの弾力を維持できると考えました。問題は、フロントサイドキャリアの着脱が簡単に行えなくなってしまう、という問題で、それを避けるためにサイドキャリアとラウンドステイを溶接ではなくダボを取り付けボルト止めにしました。

'69年頃発行 TOEIカタログより キャンピング

SIGG1.5Lのボトル用ケージは、TAのイメージでできるだけ簡単に着脱できるようにお願いしました。ワンタッチ式となるよう、いろいろな形でを考えたのですが、星野さんに「あんたサ〜、そんなんじゃガタガタしちゃって全然ダメだよ。」と全部却下され、結局お任せとなりました。基本的にTA型、上部は皮ベルトで締めて止めるようになっています。製作にあたっては、型から起こしてもらい、TOEIオリジナルパーツの中ではステムに次ぐ値段の高さになりました。ボルトは3ケ所で止めてあります。
私は4サイド輪行もやるので、リヤマッドガードは分割式にしました。が、できるだけ目立たせなくなかったので、上部に菱形の補強版を付け、分割部が目立たないようにしました。また、それに伴いFCCのテールランプもダイナモから電源がとれなくなるので、中にLEDを仕込んでもらいました。
変速機はスーパーアルビーを使いましたが、ケージが長すぎて、チェーンがリヤに近づくにつれ広がってしまうスタイルが好きでないので、ケージの長さをやや切りつめてもらいました。

ステムはエルス型にしましたが、日東のエルス型ステムのがっちりした形がキャンピングには似合うと思ったので、日東に近い形にしてあります。
ハンドルは、平行ランドナーバーだと少し窮屈な感じがするので、両端の曲がりをやや広げ、さらにパイプを15mmほど切り接いで、フィリップに近い形にしました。
フレーム関係では、ラグはCタイプ。シンプルで端正に仕上げたかったので、上のヘッドラグのアゴは、ギリギリまで削ってもらい、トップチューブがヘッド小物直下から出てるようにしてもらいました。また、ヘッドチューブをできるだけ長く見せるため、肩下寸法はできるだけつめました。さらに、マッドガードとダウンチューブのクリアランスをできるだけつめるため、フォーククラウンの厚みをできるだけ薄く削ってもらいました。その他フレームは全体的に70年代の頃の雰囲気が出るよう、フォークのエンドの形や、シートステー末端の形を加工してもらいました。

完成、引取りの日、TOEIの皆さんと

■全体を通して

今回、完成までに東叡に伺った回数は、20回くらいになったかと思います。オーダーシートを作ったのが平成17年1月でしたから、1年半かかったことになります。長かったですが、とても楽しい刺激的な1年半で、大変勉強になりました。東叡に伺いついでにフレーム製作のようすも見させてもらい、ものすごく手間暇かけている様子に感動しました。
また、今回、自分のキャンピング車が作られている様子〜ちょうどサイドキャリアを作っているところでしたが〜も見ることができました。星野さんが豪快かつ繊細に、パイプを切ったり溶接したりする様子、小林さんがラウンドステイに取り付けるヘッドランプ台座をコンマ一ミリ単位で加工する様子はまさに名人芸でした。また、山田さんはそれとなくアドバイスしてくれたり、尾坂さんが暇を見つけてはフレームの磨き加工をしてくれていました。完成した自転車を見ていると、どこをだれがどうやって加工していたのか思い返すことができ、そういった意味でも思い出深い自転車になりました。

乗ってみての感想ですが、原動機付きの自転車に乗っているようで、スイスイ自転車が付いてきます。今まで自分で組み付けたケルビムに自転車に乗っていたのですが、常用速度が5km/時は違うかな、と思えるくらいで、キャンピング車の重量を全く感じさせません。アルビーの変速機は、星野さんに「決して使い勝手のいいモンじゃないぞ。」とさんざん脅かされていましたが、上から下までガッチャンガッチャン、小気味よく変速してくれます。アルビーの台座まで加工してくれた、星野さんスペシャル組み付けのおかげだと感じました。キャンピングに出かける日が楽しみです。
最後に今回オーダーに踏み切らせてくれたのは、akutaさんのキャンピング車です。いつかは・・・と思っていたところ、なかなか実行に踏み切れなかったのですが、akutaさんの颯爽としたキャンピング車を見て、オーダーの気力と勇気が湧いてきました。いつかご一緒できたらな・・・、と思っています。

■各部分の写真UPは次へをクリックして下さい。

2006.7.12

No14

SPECIAL THANKS: nogさん