S山氏工房訪問記

ズラッと出して見せて頂いた各種ラグ。ロストワックスのラグが大半ですが、プレスラグのNervexもあります。で良く見るとオーバーサイズ用のラグが有るのが分かります。

サイクリストというのは・・・・・・マシンに対する考え方や要求、好みなど人それぞれで「良いマシン」というのは各人で全然違ってきます。一般的に「こういうマシンが欲しい」という要求は必然的にオーダー・・・・となる訳ですが・・・・
もうほとんど90と数%くらいの方はオーダーするまでで留まり、自作といっても簡単な加工や小物部品の製作程度の人が大多数だと思われます。そんな中でなんと!!!
本物のビルダーと同じ原寸図面を引いてパイプ、ラグ、エンド小物などフレーム材料を調達して自ら溶接トーチを握ってフレームを自作してしまうという・・・・・・本当に驚くべくような技術を持っている方がななんと・・・・・比較的近い場所にいるという・・・・・そんな情報を知っていてもたっても居られずに突撃訪問して来ました。(笑)その方は・・・・・サイクリストでもあるS山氏で何回かご一緒したこともある昔からの友人です。1月のある土曜にTelしてみたら・・・・・「ああ良いですよ」との返事が。ご好意に甘えて工房や自作品のフレームなど拝見させて頂きました。

■訪問:2012.1.29

■Special Thanks: S山氏

S山氏の著書です。

三重の峠はほとんど全部越えていてこのような著書も出版されています。
読むと資料などにも目を通して歴史やその峠の名前のいわれなど各方面からいろいろ掘り下げて濃い内容になっています。文才はあるし、今回もなんとフレーム自作と言う事でいや、身近にこのような人が居るのかと思うと・・・・・大変ラッキーだ考えています。
氏曰く・・・・・「この本、買ってくださいね〜〜〜〜〜!!」との事でした。(笑)

三重のほぼ中央、久居市にその工房はあります。
当然看板などは出ていません。知らなかったら通り過ぎてしまいます。工房の前の方がオーナーのS山氏です。

「HPでちょっとご紹介したいんだけど・・・・」とおずおずと申し出たらあっさり「良いですよ」との返事が。氏はざっくばらんでいろいろ話もしてもらえました。

まずは工房の中では撮影出来ないので外に出してもらった正立形の冶具。左が前で右が後ろになります。前後でエンドを固定してバックフォーク溶接、ハンガー下がり測定やフレームセンターの確認などに使用すると思われます。S山氏の凄い所はこのように一般で入手出来るL字アングルやボルトなどでオリジナル冶具を作っている・・・・と言う点です。

リヤエンド固定部分。

「BB中心より27.2mm高い」のメモがあり精度には細心の注意を払っているのが分かります。ご覧の様にごく普通に手に入るL字アングルやボルトを使用して自分なりのオリジナリティー溢れる冶具を自作している点がいや、凄いです。フロントフォークも同様になっています。

工房に入って天井には自作フレームが掛けてありました。フレーム自体は完成して今リヤキャリアを製作中だそうです。

下に降ろしてもらってシート部分です。
ラグドフレームでラグやシートステーの仕上げなんかはとても素人の工作とは思えません。

ラグはプレスラグをS山氏が加工したものだそうです。

ヘッド部分。

ローもキチンと廻って見事な出来栄えです。がしかし・・・・・S山氏は今1つの出来と思っているそうです。
次のフレームではロストワックスのラグを使ってもっと綺麗なフレームを作りたいと言っていました。

エンド部分。

SHIMANOに見えますが・・・・・アメリカ製のエンドだそうです。家族で使う自転車なのでリヤにもキャリアをつけます。エンドと各ステーの接合部分の仕上げなんか見事で素晴らしい技術だと思います。

ハンガー部分。

それこそどこかのメーカーの生地のフレームかな?と思うぐらいの見事な仕上げです。センタースタンドをつける予定なので台座が溶接されています。
写っていませんが、ダウンチューブにはボトル台座やWレバー台座もちゃんとついています!!

Fフォーク。

Fフォークもほぼ完成して前キャリアを製作中。
専用工具でクラウン上のヘッド下ワンを取り付ける為に削っている所。

その部分を拡大した所。

フォーククラウンとフォークブレードはご覧の様にしっかりローが廻って溶接されています。

フォークブレードを曲げる冶具。これまた一般に手に入る物で製作しています。お見受けする所、フォークブレードを1本ずつ曲げてからクラウンに溶接するようです。

冶具で曲げてエンドを溶接したフォーク。次のマシンのものでしょうか?冶具でブレードを曲げてエンドを取り付けた所。まだ仕上げはしてないです。

製作中のステム。

長さは105mm、やや前下がりになるように作ったそうです。コラムの方は仕上げてありますが、ハンドルバーを銜える部分はまだ仕上げ途中。
自作では当然ですが長さも角度も自由に作れます。いや、羨ましいです。

自作のキャリア。

ウ〜〜〜〜〜ン、フレームにステムにキャリア製作可能という事は自分で好きなタイプのオリジナルマシンが製作可能と言う事で夢が広がりますよね。

このキャリアはパイプを曲げる際に中に砂を入れてから曲げてあるそうです。従ってコーナーはつぶれて無くて丸で曲がっているそうです。砂にも色々あるそうで、この辺は企業秘密でした。それにしても見事な出来です。メッキはTOEIに出しているそうです。

道具類も見せて頂きました。

溶接のトーチ。溶接は酸素 -アセチレン溶接で行います。
青が酸素で赤がアセチレンのホース。溶接には専用の眼鏡を使用します。ボンベの大きさは高さが約60cm,径は10cm程度の小型の物でした。


エべレスト登山の最終アタックで登山者が担いで持って行くあの酸素ボンベの大きさですね。

←フラックス。なんでもTOEI社もこれを使用しているそうです。

使用するローです。ローには種類がいろいろありますが、一般に自転車フレーム製作では真鍮ローを使用します。

次に製作予定の自分用ランドナーのパイプがすでに準備してありました。TOP28.6mm シートダウンチューブは31.8mmのオーバーサイズで製作予定だそうです。驚いた事にそれ用のラグも今では入手出来るそうです。

■編集後記

この話の発端は・・・・・この正月の年賀状の中に自作フレーム各部分の写真や「S山製作所」の文字があって本当にビックリしてしまって一体どんな設備でどんな手順で作っているのかどうしても知りたくてtelしてお邪魔してしまいました。幸い氏とは友人で昔から知っていたのですんなりと見せてもらって苦労話なども聞かせてもらいました。サイクリストの夢の1つにオーダーがありますが、それを自分で好きな寸法、カラー仕様で自作出来たら・・・というのがありますが、なんと実現してしまったという・・・・いやはやなんとも凄い人が近くに居て・・・・持つべきは人脈友人ですよね。

取材はすんなり行って愉しくお話させて頂きました。小生も写真の様にガス溶接技能講習修了証は所有していてその気になったら自作も可能なんですが・・・・(笑)もう少し若かったら行ったかも?今回の取材に関して全面的にご協力頂いたS山氏にはこの場をお借りしまして厚くお礼申し上げます。


小生のガス溶接技能講習修了証。ガス溶接の際は携帯が義務付けられています。→

2012.2.4