BACH・トッカータとフーガ的出来事とその結末

J.S.BACHのパイプオルガンの最高傑作とその名も世界に轟く名曲、「BWV565 トッカ−タとフーガ」という曲をご存知だろうか?出だしはこんな感じである。
♪ティラリ〜〜〜ン、ティララララ〜〜〜〜リ、ティラリ〜〜〜ン、ティラララーーーー!!

実は私、この曲が大好きで、以前、国内最大級のパイプオルガンのある、名古屋・芸術文化センターで完成のこけら落としの演奏会で、国内有名パイプオルガ二ストの井上圭子氏の演奏会に行って、この曲を直に聴いた事がある。いや、もう素晴らしい演奏で、CDでもレコードでもない、本物のそれも国内最大級のパイプオルガンで聴けてもう、感激したものだった。

しかしながら、この曲、あの出だしが特に印象的?らしく、ドラマなどではおおよそ次の様な場合にBGMとして用いられている例が多いようである。(^^)
●致命的な、取り返しのつかない失敗をしてしまった。
●それをやると経済的信用的問題を招くなど、やってはならない事をやってしまった。
●何気なく人の秘密など見てはならない物を見てしまった。
●それを言ってしまうと全ては元のモクアミ、絶対言ってはならない事を言ってしまった。
●会社が倒産、建てたばかりのマイホームの返済をどう工面する?トホホ・・・・・・
●楽しみにしていた海外ツアーの直前、持病が出てしまい、泣く泣く諦めるはめに・・・・・・

●サイクリングではそう、悪路の連続、パンクの続出で、山の中予備チューブ、パッチも尽き果て、日も沈んで来て一人きり、さて、これからどうする・・・・・・?

前置きはこれ位にして、最近、私に起こったトッカータとフーガ的出来事とは・・・・・・・・・・?

毎年1回、健康診断が会社であり、いつも例年は所見なしで「A」をもらって、看護婦さんからは「いつも健康で若々しくてよろしいですね。」というのは例年のパターンだった。
体力測定も特に酸素摂取能力測定(自転車こぎ)は、サイクリストの悲しい性、フレームサイズやペダリング位置をビシッと決めて、アンクリングなどのテクニックを駆使、20代の若さの摂取能力の値が出て、それはそれは気を良くしていたものだった。

今回の健康診断も「問題なく」終了し、後は結果待ちの状態だった。
2週間程して健管センターから一本のTELが職場に来た。「あれっ?何かな?」と思ってTELに出ると、「この前の胃のレントゲンで所見がありますので、なるべく早くこちらの方へお越し頂けますか?」ギクッ!!
「はい。判りました。」  ♪ティラリ〜〜〜ン、ティララララ〜〜〜〜リ、と、その時、BACHのトッカータとフーガの出だしの部分が頭に・・・・・・。

その時はちょっと手が離せなかったので、しばらくは仕事をしていた。頭の中は何かなあ、軽いのかなあ、もしかして・・・・・?そう、私の親父も叔父も胃ガンでこの世を去っている。親父は発見が遅れ、見つけた時にはすでに、他にも転移していて、手遅れの状態だった。4回開腹手術をして胃を3/4摘出、治療した甲斐もなく発見から4年でこの世を去った。そんな事がふっと頭をかすめた。ああ、私も親父と同じ道を歩んでしまうのか?

午後、仕事の合間に健管センターへ。行くと部屋に通され、目の前には凄い美人の医者が・・・・・。(^^)v
いや、才色兼備とはこの事をいうのか・・・・と、ボ〜〜〜と見とれながら説明を聞き入っていると・・・・
胃のレントゲンの写真を2〜3枚蛍光灯に写して「ココとココですが・・・・・、ホラ、このあたりと違うのがお分かりですよね?明らかに潰瘍にかかった跡と思われます。」と事務的な説明。私にはヨクワカラナイ。
すると・・・・「それでは念の為、胃カメラ飲んで頂けますか?」と来たもんだ。それはどうしもイヤだったので駄々をこねて「何か他の方法はないのですか?」「無いです。」「その検査どうしても受けないとだめですか?」「やった方が良いです。」「別になんともないし・・・・ほっておいても良いのではないですか?」「検査はやった方が良いです。後で手遅れになる場合もあります。」ムムム・・・・・どうしても逃げられそうにない・・・・・と観念。仕方なく検査日を予約し、その日はそれで終了。あとで職場の人に聞いたら・・・・「会社の胃カメラは旧式の太いヤツやで。ホレ、アソコ、民間のあの病院は最新式の細いヤツでそれで上手いで。」ああ、オレは旧式の太いヤツでそれほど上手くない(失礼!!)のか・・・・・トホホ・・・・・。

で、当日。丁度時間に行くと部屋に通され、何やら麻酔の薬が・・・・。「これちょっと飲んで下さい。数分で効いてきます。」薬を飲み込む。で喉の感覚がだんだんなくなってきた。と・・・・・・・・カーテンがさっと閉められた。ウワ〜〜〜!!これって見られては困る訳〜〜〜!?そういえば何やら大きなトレーが用意してある。医者が「これ、くわえて下さい。」と穴の開いたマウスピースを寄こした。穴は一cm位。結構大きい。医者の横にはモニターがあって、何やら画像が映っている。ギョッ!!これに写るのか〜〜?医者が旧式の(?)太い胃カメラにワセリンみたいなものを塗っている。「ハ〜イ。入れますよ〜〜〜、何も怖くありませんからね〜〜〜すぐ終わりますよ〜〜〜。」ああ〜〜〜!!もう地獄!!ギョエッ!!く、苦しい〜〜〜!!オレが何をした〜〜〜!!何も悪い事はしていない〜〜〜!!浮気もしそうになったけど(^^)一度もしてない〜〜〜!!息はなんとか出来る。思い切り吸い込むとちょっと楽になった。

しかし、驚いたね〜〜〜。この胃カメラ、明るいランプ、高性能の超小型カメラ、組織を切り取るカッター?などついていて、モニターで胃の中が手に取るように判る。「ハイ、ちょっと空気を入れますね〜〜〜」なんと空気も入れて、胃を膨らませる事も出来るのだ。コラッ!!オレはカエルじゃな〜〜〜〜い!! プンプン。小学生の頃遊びでカエルの口の中にストローで息を入れてお腹を膨らませてイタズラをした事を思い出した。ジーカシャッ!!ジーカシャッ!!胃の中をカメラが撮影しているのが判る。「それじゃ空気を抜きます〜〜〜」お腹がスッと凹んだ。ヤレヤレ・・・・・・・
十分程で検査は終了。胃の組織も一部取ったらしい。医者が「それではこれ食事の前に飲んで下さい。」と薬を寄こした。胃の壁を保護するらしい。「それじゃ結果は2週間ほどかかりますので〜〜〜。今日はこれで終わりです。」

結果が来る2週間の間、憂鬱な気分だった。もし医者から「末期ガンで余命あと6ケ月ですね。」なんて宣告されたらどうしよう・・・・・・・。まだ行きたい所もある・・・・・・まだ作りたい車もある・・・・・・この3月に作った車、まだ全然走ってないじゃないか〜〜〜!!せめて息子や娘が結婚して孫の顔を見るまではなんとか・・・・・・・・・と考えていた。
そういえば白血病やガンで余命あと6ケ月・・・・・なんていうストーリーの映画は非常に多い気がする。いや、実際、あと6ケ月の命だったら何をするかなあといろいろ考えた。自分の半生記を書く・・・・・本当に行きたいヨーロッパあたりへツーリングに行く・・・・・家族で最後の想い出作りにハワイあたりへ行く・・・・・などなどいろいろな想いが頭を横切った。オレの人生、幸せだったのか?これで良かったのか?後悔はなかったのか?いや、ホント、これほど真剣に「生きる」と言う事を考えた事は今まで無かったと思う。カミさんには「何、大した事はないサ。」と他人事のようにそれでも心配させないように言ってやった。もし万が一、もしもの事があったら・・・・・このオレと結婚して良かったのか?ほかの人の方が良かったのではないか?残された家族はこれからどうなる・・・・・・?

いろいろな複雑な思いをしながら・・・・・・・約2週間。やっと結果が来た。おそるおそる封筒を開けて中を確認すると・・・・・・・・?
「組織検査の結果、
「胃潰瘍治癒痕」でした。何も問題ありません。」・・・・・・・・・・だと
その瞬間、頭の中では・・・・・ベートーベン交響曲第9番合唱付・・・・・・・そう、年末恒例の「喜びの歌」がボリューム一杯でガンガン鳴り響いていた。ああ〜〜〜!!良かった。これでもう少し走れそうだ・・・・・・。
v(^^)v

少しは楽しんで頂けましたでしょうか?   それではお後が宜しいようで・・・・・  チャンチャン。

2004.8.1